種子法廃止の大義は存在するのか?




どうも,野良百姓です.
種子法が廃止される運びとなりました.こんな書き方すると悪い意味で拡散してしまいそうなので,先に申しあげておきますが,世の大勢と同じく種子法廃止に大義を見いだせておりません.
というわけで,今回は私なりに状況を整理していく中でその意味を考えていきたいと思います.あ,野良百姓とかいうだけあって法律の専門家ではないので,あくまで野良百姓の個人的見解ですので…そのあたりは許していただきたいと思います.

種子法とは

まず種子法についてを知らなければ,お話になりませんので法律のお話です…ツマラナイとか言わないでください.
まず,種子法の名称は「主要農作物種子法」といいます.

非常につまらないですが,まずは条文からです.一応,日本法令索引から引いてきているので大間違えということはないと思いますが…
第一条では目的が掲げられており,「主要農作物の優良な種子の生産及び普及を促進するため,種子の生産については圃場審査その他の措置を行う」となっております.
第二条では「主要農作物は稲,大麦,はだか麦,小麦及び大豆」と定義しております.また,「圃場審査は種子生産圃場において栽培中の主要農作物の出穂,穂ぞろい,成熟状況などについて審査」ということです.生産物審査の定義は「都道府県が,種子生産圃場において生産された主要農作物の種子の発芽の良否,不良な種子及び異物の混入状況」の審査となっております.
後はうだうだいろいろ書いてありますが,次に大事なのは第七条の原種及び原原種の生産でしょうか.まぁ,細かいことは置いておき,他の記事では字数の都合であまり見られない条文について触れていきましょう.

逐条理解など

まず第一にお断りしておくべきことですが,野良百姓さんは法律は門外漢ですので,条文を読んで(こんな普通の人だと)どう考えられるのか,ということをベースに話を進めていきます.なので,あくまでこれは個人の見解だということでお願いいたします.

第一条は解説なんてしなくてもいいでしょう.

第二条ですが,イネ,オオムギ,ハダカムギ,コムギ,ダイズの5つが主要な農作物として定義されています.ジャガイモとかサツマイモが入っていないのが意外でしたが,これらは栄養繁殖なので種子がいらないわけですね.種子法の対象外というのも頷けます.「圃場審査」と「生産物審査」の2つで種子の品質管理を行っているという認識でよいのではないでしょうか.「圃場審査」では成熟関連の調査を,「生産物審査」では発芽率の検定や異物混入がないかをチェックしているわけですから.

第三条では,種子生産を行う圃場の指定に関するものです.この中では,農水大臣が都道府県別,また,主要農作物の種類別に定めた種子生産圃場の面積を超えない範囲で,営利用の種子の生産または委託生産をする圃場の指定に関わるものです.

第四条は審査です.圃場審査や生産物審査に関わる規定です.まずは圃場審査を受けることになっています.これが終わった後で,その畑から生産された種子を生産物審査を,栽培農家は請求するという流れになっています.審査関係は第五条と関わっております.第五条では2つの審査を行った後で,都道府県は,それぞれの作物ごとの基準などをクリアしていれば省令で定めた各種証明書を交付する義務があるということになっています.ちなみに,第三条で種子生産を行う圃場に指定された農地の経営者を「指定種子生産者」と呼ぶことになっています.

そして,第六条では都道府県は優良種子生産及び普及のために指定種子生産者に対して,都道府県が負う義務について書いてあります.主要農作物の優良種子の生産や普及のために勧告や指導をせよ,となっています.

第七条では,主要農作物の原種及び原原種を栽培する圃場を設置するなどの義務を都道府県が負っていることになっています(原種や原原種を栽培できると考えられる圃場ならば委託もOKとなっています).委託の場合は第四条から第六条の規定を準用して,証明書をとれよとなっています.
さて,ここで出てきた原種や原原種ですが,後で解説します.

最後の第八条ですが,都道府県は都道府県内で普及するべき主要農作物の優良品種を決定するための試験をする,となっています.これによって,地域ごとに適した品種を探し出して,それに求められる栽培管理法を農家に普及していく… というのが現在のところ行われている農業普及の業務というところでしょうか.ちなみに,この「都道府県内で普及するべき主要農作物の優良品種」を奨励品種と一般には言われています.

原種と原原種の保全

第七条で出てきた原種と原原種についてです.
原原種圃場は英語でbreeder’s seed farm,原種圃場は英語でfoundation seed farmといいます.原原種は種子の流れの最上流にいて,非常に厳しい条件で管理されています.なんせbreeder’s farmですからね.次の新しい品種にも使えるように… という思惑もあるはずなので.
ところが,原種圃というのもあります.これは,原原種圃でとられた種を増やすために必要な圃場です.で,これを用いて採種圃と呼ばれる指定種子生産者の畑で育てられたものが,種子として流通するという流れです.

ここで,原原種の保全は必要なのか?という疑問がわいてくるのではないでしょうか.

答えはYes.原原種は,品種特性を維持している基本となる種なのです.どういうことかというと,農家の畑で栽培しているうちに少しずつ品種特性が失われるということが起こります.まぁ,これがいい方向に行けば新品種の作出なんですけど,そんなことはあまり起こらず,むしろ求めていたものが亡くなっていく方が多いんですが.
そういうわけで,元になっている由来のはっきりした純粋な種がないと,品種の特徴(味とか香りとか)が失われてしまうんですね.

まぁ,誤解が生まれることを承知で,おおざっぱなイメージを言うなら,原原種圃場は純粋エリート集団の村,原種圃場と採種圃場がエリート集団の村,農家の畑だとエリートからそうでないのまで混ざった普通の村,といったところでしょうか.

種子法を廃止する意味はあるのか

はい,本題です.種子法の廃止には意味があるのか.

正直言って,あまり意味がありません.

いちいち反論していきましょう(楽しくやっていきましょう).
1点目です.「都道府県の開発品種を優先的に奨励品種に指定するため,民間育種の奨励にはつながりにくい」だそうです.
これは言いがかりですよね.第八条で,都道府県は地域ごとに適切な品種を探して来いよ,ついでにそれにあった栽培法も普及できればやっとけよ,となっているわけですよ.別にね,優先的にやってんじゃないのよ.地元で育種したらそれが一番よかったんです→だから地域に適切な品種(奨励品種)ですよね,というロジックなわけで,イネと違ってオオムギとかだとキリンビールの育成した品種も奨励品種になってるんですよね.非常に古いかもしれませんが,昭和55年に滋賀県で登録されてますし,そんなに無理な話じゃないですよね.

2点目です.「輸出用米や業務用米など都道府県の枠を超えた広域的な種子生産が求められても,奨励品種には指定されにくい」だそうです.
業務用米とか輸出用米の米穀基準作れよ.あ,私がこういうことを言う理由は,コメ先物にあります.

みなさん,先物好きですか? 私は結構好きだったりします.

先物って,受渡し標準品っていうものがあるんですよ.例えば,米国のシカゴの小麦先物市場だとSoft Red Winterの2級品が受渡し標準品です.
前のエントリで書いた小麦粉のお話ではカンザスシティーの先物市場ではHard Red Winterの2級品が標準品でしたね.

6月.麦秋です.皆様いかがお過ごしでしょうか.野良百姓です.ここ最近は雨が少ない梅雨だったようにも思いますが,今年は割と降っているようです.今度は降りすぎで根...
日本のコメ先物では,大阪コメ,東京コメ,新潟コシというものが銘柄として試験上場しています.新潟コシは新潟産コシヒカリということでまぁ許してやりますよ.東京コメの受渡し実績を見ると,様々な産地の様々な品種の1等米を取引しています.
同格品なら取引OKとはいえ,何が来るのかわからないガチャみたいな感じしますよね.こんないろいろな品種をバラバラ売買しているようじゃ,受渡し標準品の基準が何なのか?と気になりますね.私がコメ先物の取引するなら,受渡時に予定外の品が来たときは,めっちゃディスカウントしてやりたい気分ですよ.取引者が増えないんだから,枚数もそりゃ集まらないでしょう(まぁ,実需者が参加してくれないからコメ先物がうまくいっていないという話なんですけど).とりあえず,ぐだぐだ言っていないで,「ブレンド米のブランド化」をしておいてほしいですね.先物取引もしやすいし,広域的な栽培が可能になるはずだから.

3点目です.「必ずしも米麦などの主産地でない都道府県を含めたすべての都道府県に対して原種,原原種の生産や奨励品種の指定試験などを義務付けている」だそうで.
まぁ,これはいろいろと話を聞いているとそういうわけでもなさそうよ.前に試験場の人に話を聞いた時に,「奨励品種ないよ,うち」って言っているし.大学の時に見学に行った試験場でも,イネの栽培とか麦の栽培を大々的にやっていないところだったから奨励品種の研究していない,とか言っていたし.この辺りはやっぱり事実誤認なんじゃないかなぁ.
これを仮にですけど,関東東山とか,東北とかの地域ごと(または道州ごと)に巨大な試験場を作ります,という話をしたときにはどういうリアクションするんでしょうか.それでもゴリ押してくるんでしょうね.結論ありきで話を作っているから.

結局のところ,明確に廃止するべきロジックはないなっていうのが感想ですね.例によって結論ありき,無責任な民間議員の意見だけを聞く.議会民主制を無視した行動ともいえます.日本では国民投票もないからなぁ.公文書もザルなので後からどうしてこうなったかを追跡することもできないし.
まぁそれはともかく,今後どうなっていくのでしょうか.すでに中国地方の県知事が連名で廃止した後の原原種圃場の維持などに関して嘆願を送った模様です.

こんな国ですが,農業という産業そのものは死にません.なんとかやっていきましょう.

(2017年6月13日: 追記)この記事の続編を書きました.

どうも,野良百姓です.横浜のあたりから今の種苗会社と種子法の間の関係はどうなっているのか? もしかしたら増収するのでは? みたいな疑問が飛んできました.前回のエ...




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

ABOUTこの記事をかいた人

研究者になることはやめましたが,農とともに心はあります. 何とか「修士(農学)」の学位を獲得できた模様.このブログもそろそろ真面目に書かないと... と思っています.