ミカエリス―メンテン式の導出




どうも,野良百姓です.
植物のトランスポーターのお話をした際に,Michaelis–Menten式を天下り的に使っていましたが,実際どのようにしてあの式が導かれるのか? ということを疑問に持たれる方もいると思います.

そこで,今回はひたすら式変形をしてどうやってMichaelis–Menten式が導出されるのかについてお話をします.

Michaelis–Menten式の導出法

迅速平衡法

まず,酵素を\(E\),基質を\(S\)とし,酵素―基質複合体を\(ES\),反応生成物を\(P\)とします.
すると,酵素反応は次の式で表されます.
$$E+S\rightleftharpoons ES\to E+P$$
この時,反応は\(E+S\rightleftharpoons ES\)と\(ES\to E+P\)の2つの反応に分けて考えることができます.

ここで,\(E+S\rightleftharpoons ES\)の反応は直ちに進み,平衡状態に達すると仮定して,解離定数を\(K_s\)とします.
また,後者の反応を律速段階と仮定して,反応速度定数をとりあえず\(k_r\)とします.
そうすると,
$$K_s=\frac{[E][S]}{[ES]}$$
という式を得ることができます.

この反応の中では,酵素には2種類あります.
すなわち,基質と結合している酵素\(ES\)と基質と結合していない酵素\(E\)の2種類ですね.
反応液の中に存在している全酵素濃度\([E]_0\)は両者の濃度の和に等しいので,次の等式が成立します.
$$[E]+[ES]=[E]_0$$
ここで,\([ES]\)を未知として上の2式を解きます (\([E]={E}_0-[ES]\)).
\begin{equation}
\begin{split}
\begin{cases}
[E][S]-[ES]K_s=0 \\
[E]+[ES]=[E]_0
\end{cases}
&\Leftrightarrow ([S]+K_s)[ES]=[S][E]_0 \\
&\Leftrightarrow [ES]=\frac{[S][E]_0}{[S]+K_s}
\end{split}
\end{equation}

さて,最初に仮定した反応機構の後半部分は単位時間当たりに生産される反応産物\(P\)の量は酵素基質複合体\(ES\)と反応速度定数\(k_{+2}\)の積で与えられる,と考えられますよね.
なので,反応速度式は次のようになります.
$$v=\frac{d[P]}{dt}=k_r[ES]$$

ところで,\(ES\)は一つ上の式で解きましたよね.
そこで,ここでできた反応速度式の\(ES\)にその値を代入してみましょう.

$$v=\frac{k_r[S][E]_0}{[S]+K_s}$$

こうなりますよね.

この時,\(P\)の生成速度\(v\)は\([ES]\)に比例することは\(v=\frac{k_r[S][E]_0}{[S]+K_s}\)から明らかです.
しかし,\([ES]\)の最大値は\([E]_0\)なので,\(V_{max}\)は次のように書けます.
\begin{equation}
V_{max}=k_r[E]_0
\end{equation}
そのため,\(P\)の生成速度を示した式と, 上の式から,次の式が導かれます.
\begin{equation}
v=\frac{V_{max}[S]}{[S]+K_s}
\end{equation}

ここで\(K_s=K_m\)とすると,Michaelis–Menten式が導かれたことになります.

定常状態法

迅速平衡法では\(E+S\rightleftharpoons ES\)がすぐに平衡状態に達すると仮定されています.
そのため,\(ES\to E+P\)の反応速度が\(E+S\rightleftharpoons ES\)よりもはるかに小さい反応でしか成立しません.
あくまで,こういう特殊な条件では成立しますよ,ということですね.

なので,定常状態法を用いて一般の反応でMichaelis–Menten式が成立することを示したいと思います.

反応機構は迅速平衡法と同じ,\(E+S\rightleftharpoons ES\to E+P\)で考えます.

ここで,\(E+S\rightleftharpoons ES\)について,右向きの反応速度定数を\(k_c\)とし,左向きの反応速度定数を\(k_d\)とおきます.
定常状態では各酵素種の経時的な濃度変化はないので,
\begin{equation}
\frac{d[E]}{dt}=(k_d+k_c)[ES]-k_r[E][S]=0\\
\frac{d[ES]}{dt}=k_c[E][S]-(k_d+k_r)[ES]=0
\end{equation}
といえます.

定常状態
反応速度論では,各物質の濃度に変化がない化学平衡状態と区別して,化学反応において反応中間体の生成速度と分解速度が等しい状態を定常状態として定義している

ここで、反応産物は\(ES\)から\(k_r\)の速度で生成されるので,
\begin{equation}
v=\frac{d[P]}{dt}=k_r[ES] \end{equation}
となります.

この時,ここまでの2式を連立式とみなして\([ES]\)を求めると,
\begin{equation}
\begin{split}
\begin{cases}
k_c[S][E]+k_c[S][ES]=k_c[S][E]_0 \\
(k_d+k_r)[ES]-k_c[E][S]=0
\end{cases}
&\Leftrightarrow
[ES](k_c[S]+k_r+k_d)=k_c[S][E]_0 \\
&\Leftrightarrow
[ES]=\frac{k_c[S][E]_0}{k_c[S]+k_r+k_d}
\end{split}
\end{equation}
となります.

ここで、得られた\([ES]\)を\(v=\frac{d[P]}{dt}=k_r[ES]\)へ代入すると,
\begin{equation}
\begin{split}
v=\frac{d[P]}{dt}
&=\frac{k_ck_r[S][E]_0}{k_c[S]+k_r+k_d} \\
&=\frac{k_r[E]_0[S]}{\frac{k_d+k_r}{k_c}+[S]}
\end{split}
\end{equation}
となります.途中で\(k_c\)で分母分子を割っていますが,この方が見通しが良くなるからです.深い意味はありません.

ここで,\(V_{max}\)の時,\(V_max=k_r[ES]\)ですが,\([ES]\)の最大値は\([E]_0\)ですから,
\begin{equation}
V_{max}=k_r[E]_0\\
K_m=\frac{k_c+k_r}{k_d}
\end{equation}
とすると,先ほど作ったごちゃごちゃとした式は
\begin{equation}
v=\frac{V_{max}[S]}{K_m+[S]}
\end{equation}
となって,見事にMichaelis–Mentenの式が導出されてきたわけです.ヤッタネ!

実験的なKmとVmaxの求め方

さて,Michaelis–Mentenの式は導出できましたが,実際の実験を行った時にわかるのは,基質濃度に対する酵素の反応速度だけです.
そのため,この2つからKmとVmaxを推定します.

そのための方法は3つあります.
ここで各方法についてこまごま書くことは本意ではないので,名前だけ書いておきます.

  1. Lineweaver-Burkプロット
    →x軸に基質濃度の逆数を,y軸に反応速度の逆数を取る
  2. Eadie-Hofsteeプロット
    →x軸に反応速度を基質濃度で割ったものを,y軸に反応速度を取る
  3. Hanes-Woolfプロット
    →x軸に基質濃度を,y軸に基質濃度を反応速度で割ったものを取る

実例

ひたすら数式変形を見て,実際の実験での求め方が3つありますよ,と言われてもピンとこないと思うので,実例をもとにしてグラフを書いてみましょう.

R を用いて酵素反応のグラフを書いてみる

このグラフは,Rというフリーの統計ソフトウェアに含まれているデータセット (Puromycin) を用いて行いました.
ggplot2とかを使えばもっときれいに欠けるとは思うのですが,今回は気楽に見やすいグラフを… という観点で作ったので.

参考までにコードを置いておきます.
もっときれいなやり方をご存知の方は,ぜひお知らせください.

 




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ABOUTこの記事をかいた人

研究者になることはやめましたが,農とともに心はあります. 何とか「修士(農学)」の学位を獲得できた模様.このブログもそろそろ真面目に書かないと... と思っています.