カバークロップの意義と選び方




カバークロップ,皆様ご存じでしょうか.被覆植物とも言います.
今日はそのカバークロップの意味や選び方についてお話ししたいと思います.

カバークロップとは

カバークロップは地表面を覆い,土壌の表面を覆い隠すために栽培する植物の総称のことで,一般的には草丈が低く地表を這う性質のある植物を用いることが多いです.「植物」といっても,種で増えるものだけではなく,球根性のものや木も(!)用いられます.実はこの「カバークロップ」,概念として緑肥作物や法面緑化に用いる地被作物と重なる部分が多く,狭い意味でカバークロップというと地被作物と同じとみなされるのですが,今回は緑肥も含んだ,畑を覆うもの,という感じで話を進めていきましょう.
まず,カバークロップには生育の速い作物が用いられます.休閑期のような作物栽培の狭間ではカバークロップとして,また,作物の栽培中ではコンパニオンプランツとして用いられています.このように用いられるカバークロップも,収穫することはできるのですが,その大きな目的は畑の土の改善,肥料成分などの天然資源の保全,そして土壌の流亡の低減です.
このような効果をもつカバークロップは,多くの農家が環境と経済的な便益を実現する手段として広まりつつあります.

とはいえ,カバークロップを育てるとなると,余分な種を買う費用や,人件費,時間がかかってしまいます.そこまでして,カバークロップを利用する価値があるのか? という話になることは必定ですが,はっきりと申し上げましょう.

 

カバークロップは利用する価値があります.

これは,今までの農家の経験則と科学的な研究に基づいた判断です.カバークロップのもたらす潜在的な便益は非常に幅広く,これらの便益は農家の収支の改善に大きく役立つものであるといえます.

カバークロップの与える便益には

  1. 肥料の集積
  2. 窒素の固定
  3. 土壌流亡の低減
  4. 雑草の抑制
  5. 飼料の生産
  6. 土壌の膨軟化
  7. 土壌の質の改善 (作土の改良)
  8. 有益な昆虫や動物の誘引
  9. 土壌の湿度を保つ

といったものがあります.
こうした便益も,農家の事情や季節といったものによって変わっては来ますが,どのようなカバークロップを植えたとて2つか3つは備えていることが多いです.畑をする際には,何が求められているのか,また,休閑期に栽培をするのであれば次に植えるものに与える影響はいかに,ということを考えて栽培をする必要があります.というわけで,それぞれに適したカバークロップなどについて述べていきます.

カバークロップに何を植えるべきか

上に挙げた便益とそれに適したカバークロップについて挙げていきたいと思います.

肥料の集積

ある種のカバークロップは土壌に残った肥料成分を集めて有機物に変換することができます.といっても,何かアヤシゲなことをするわけではなく,肥料成分を集める能力が高い植物を育てて,植物をそのまま土壌に鋤きこむことで達されるのですが.
こうした働きを持っている植物には多くの穀物類が挙げられますが,ライ麦が特に良いのではないでしょうか.ライ麦は,小麦などを育てたあとに畑に残った窒素肥料を吸収して成長し,有機窒素として春まで畑に残ります.窒素肥料は非常に移動しやすい成分で,大雨などで川に流出してしまいます.ということで,窒素肥料などの肥料成分を畑に残しておくにはもっとも良いでしょう.
改めて書きますが,この便益を得るためにもっとも良いのはムギ類の穀物です.

窒素の固定

一部の植物だけができる特別な能力が,窒素固定です.マメ科植物がこの便益を与えてくれるカバークロップになります.最近は見なくなりましたが,かつて田んぼで春先にレンゲを育てていたのもこのためです(勝手に生えてくるわけじゃないですヨ).
クローバーやアルファルファ,ツメクサ類やヘアリーベッチ等がカバークロップとして利用できます.

土壌流亡の低減

多くの畑作を行う農家は,土壌浸食を減らすために畑に作物が植えられていない時期を最小限に抑える必要があります.例えば傾斜地では,何も植わっていない時期に雨が降れば表土が下に流れてしまいますし,冬の関東地方は強い北風で土埃が舞い上がって表土が失われてしまいます (土埃が近所迷惑というのもありますが…).
そういうわけで,こうしたことを防ぐために育ちの速いカバークロップというのは最も良い方法といえましょう.国外ではコーティング種子 (solid-seeded) のカバークロップを用いているようですが,日本ではここまでしなくてもいいのではないでしょうか.まぁ,こういったカバークロップを使うことで,土壌の流出を減少させることができ,土壌中の水分保持量を増加させるだけでなく,肥料成分の流出を減らすことができます.
このために用いるのはなんでも大丈夫.

雑草の抑制

カバークロップの生育が早いと,雑草との生育競争に打ち勝つことができ,雑草がはびこることを抑制することができます.雑草は作物栽培の上で非常に大きな問題になるのですが,カバークロップなりコンパニオンプランツなりを本来育てたい作物の近くに植えておくことで,雑草の生育を抑制できます.
早く育つという点で,麦類やソルガム,ソバが良いとされています.

土壌の膨軟化

根を深く張る植物によって,固く締まってしまった土壌を柔らかくすることが出来ます.不耕起を行うことで固くなった作土層に根が入り込むことで,水が浸透しやすくなります.これによって,畑を耕す際に土が柔らかくなっていることでトラクターの燃費が改善され,また,土壌全体を自然に改良することができます.
こうした役割を果たすには,アルファルファやダイコンのような根菜が適しています(ただし根が二股とかになることもあるので売れるかどうかは微妙).

作土の改良

作土の改良とはいうものの,「改良」が何を指すのかあいまいですよね.何か変な薬品入れるんじゃないか,みたいな.ここで「改良」とは,土の物理性を変えて,植物が育ちやすい環境を整えるということです.柔らかくしたり,土の「団粒」という構造を増やしたり,排水性を改善したり,という感じ.
こうした様々な物理性の改善や,土壌中の有機物の増加の両方に,短期的・長期的に良い影響を与えるのがカバークロップなのです.論理で言うなら,土壌中の有機物が増えるから物理性が改善される,というのが本来の順序ですけどね.また,土壌中の有機物が増えると,肥料成分を土壌に吸着させることができたりだとか,有機物から少しずつ出てくる肥料成分がある,ということで,土壌の肥沃度も高めることができたりします.
こうしたことを目的にするなら,どんな作物を使ってもいいです.

有益昆虫などの誘引

畑いじりをしないとピンと来ないかもしれませんが,畑にも食物連鎖があります.カバークロップを植えておくと,カバークロップの中で天敵が増加します.花が咲くようなカバークロップだと,例えばハチのような天敵昆虫を引っ張ってくるのにいいわけです.その上,花が咲いていると植物の花粉を運ぶ昆虫も来てくれますから,実が着きやすくなる,という可能性もあります.例えば,クローバーがそうです.宮崎県ではナスにつく害虫のアザミウマというものがいるのですが,これの天敵となるカメムシがクローバーにつく虫も餌にするんですね.なので,クローバーをナスの畑の近くに植えておくといいですよ,という防除体系があるとか.
こうしたことを目的とするなら,クローバーやソバといったものがあります.

最後に

こうした様々ないい点があるので,カバークロップ,使っていきましょう.
でもね,下手に農薬をまくと求めていた効果が出てこないんですよ.農薬を撒くときは,作物以外にかからないようにする,だとか,天敵に影響がない農薬を撒く,だとかしていかないと難しいかもしれません.
理想は無農薬? いや,そういうこととは違うんですよ.まぁ,そのへんはいずれ話したいと思います.




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ABOUTこの記事をかいた人

研究者になることはやめましたが,農とともに心はあります. 何とか「修士(農学)」の学位を獲得できた模様.このブログもそろそろ真面目に書かないと... と思っています.