IoTと未来の畑




どうも,野良百姓です.
最近は垂直農場でしたっけ,流行ってますね.ForbesとかBloombergに載っていたような気がします.

いずれはこういった植物工場の話もしたいのですが,今回は外の畑の話です.農業×ITっていうのも流行っているので,そのあたりの知識の整理にお役立てください.

IoTとは

いまさらですが,まずはIoTとは何ぞや,というところから始めましょう.

IoT; Internet of Thingsは,デジタル機器とセンサー類で満ちた世界のこと,と考えておきましょう.
ハイプサイクルによれば,IoTはそろそろ幻滅期にはいるとされていますが,実際のところどうなるのかについては不明です.

農業の歴史

唐突なのですが,ここで農業の歴史を区分してみましょう.
ちなみに,この区分はOnfarm Systemという会社の創設者であるLance Donny氏によるものです.

小農主体の労働集約農業

紀元前から1920年代まで行われていたもので,小農が自分のために生産していくという自給的な農業がベースになっています.
平均的には0.8haで1人分の食糧を生産していた時代といえます.

大型農家主体の粗放的農業

1920年代から2010年代に行われている農業です.現在も続いています.主に商業生産が目的となった農業です.
大型の農業機械 (トラクターやコンバイン),化学肥料,メンデルの遺伝の法則の解明によって開かれた農業の形態であるとDonny氏は分析しています.
平均的には,5人分の食糧が0.4haで生産できる状況です.

正直に言うならば,規模拡大を支えたのがトラクターやコンバイン,生産性の向上を行ったのが化学肥料やメンデル遺伝なので,商業的に大規模な農業を行う,ということを本来は2つに分けた方が正しい認識になるのかな,というのが私なりの考えですね.
まぁ,もっというならなぜ農薬の話が書いていないのかが不思議です.農薬の積極的な利用が始まったのは1930年代以降なので,生産性の向上という点では大きな役割を果たしているはずです.

データを用いたハイテク農業

で,ここからが重要なのですが,現在研究途上で,今後の農業の担い手となっていくと考えられているのが,データを用いた農業です.
Donny氏の言い方を借りるなら,Agriculture 3.0ということですね.Indutry 4.0のパクリっぽいと思いますけど.

このデータ農業では,様々なところからデータを得てきて,それをもとに農業を行っていく,というものになります.
データ源になるのは,農業機械であったり,畑や水田に設置したセンサーであったり,植物に付けてあるタグであったり,気象データだったり,衛星写真やドローンの画像など,様々なものが考えられます.
というか,今のIT農業の話っていうのは集めてきたデータの統合フェーズではなく,データをどうやって集めてくるのか,という話が中心ですね.

そして,このデータを統合して施肥量であったり潅水量だったりを調整していく,というのが最終的なデータ農業の目標となっています.

未来の畑作農業

Donny氏の上の農業史上の分類に納得がいくのでしょうかね.

私は納得できませんね.
小農主体の労働集約農業から大型農家主体の粗放的農業へと変化していった,という主張自体は誤りではないと思いますが,国によってその程度というのは異なりますよ.
アメリカ合衆国ではそうだった,というだけで,むしろイギリスでは大型の農家による労働集約的農業 (資本性的農業) を営んだ時期もあったわけですよ.それでも小農主体へと戻ったわけですから.

まぁ,そんな農業史の分類はさておき,未来の畑作農業はどうなっていくのでしょうか.

農耕地面積が都市化や砂漠化などによって減少しているということや,人口の増加で食糧問題が発生する可能性があるという現状を考えると,生産性を高めていくことは必要ですよね.
その生産性の高め方としてもいろいろありますが,化学肥料をガンガン使っていくのはエコじゃない,とか.GMOは食べたくない,だとか.
色々な主張があるわけですよ.
現状としては,総論賛成各論反対の状況が生まれているわけですよね.

で,そういう状況であるならば,既存のものを使ってより効率よく農産物を作っていくというのは正しいのではないか,と考えるのがスジですので,「データを用いた農業になっていく」というのはあり得ない話でもないとは思うんですよ.

ただ,データを用いた農業を行うに当たっては,それまでの各種のデータ蓄積が必要なんですよね.
私自身はデータを用いた農業をやりたいなと思う部分はあるので,いずれは富士通さんの機器を買いたいとは思っています.ただ,こうした機械を持っていない農家の人がどうやって対応していくのかなぁと.
試験場などのデータを仮のデータとして使って,それを用いて地域に最適化させるという手法をとるんですかね? 別に悪くはないですけど,そうだとしたら自分で機械の購入と設置を行おうとしている農家がいたとしても,わざわざ自分では購入せずにそのデータを天下り式に使った方がいい結果が出るわけですから,メーカー側としては困ってしまうはずですよね.

まぁ,まだ現状としてはデータをどう活用するか,という話が始まったあたりですし,実際にどの程度農業に役立つのかは未知数です.
自分が実験して出している結果だって,他の人がやれば少し外れるでしょうから,地域差があったりするデータをどうきれいに扱うのか,というところが統計学の方々が今やってるいわゆる”ビッグデータ解析”なんでしょうし.

今後,これらのデータを統合して扱えるようになった暁には,結局自分でデータを取る機械を買おうと買うまいと,データを持っている会社が農業生産を支配する,という図式になってしまう可能性も否定はできません.
というか,そうなってしまうんじゃないかな.

ただ,どこまでそのデータをとれるのか,また,蓄積できるのか,という話はあるわけですよ.
データ的にこういう生産物をこの程度生産する農産物ポートフォリオがいい,というのがまず与えられたとしてですよ? それをそのまま実行して,何も問題なく栽培が進めばいいんですけど,そうはいきませんよね.

例えば,台風が来たり,洪水があったり,渇水があったり.盗難もあるかもしれませんよね.
こういったイベントが発生した時に,生産物が予想通りに栽培できる保証なんてあるわけないんですよ.何なら価格も予想通りにはいかないわけですよ.
こういうイベントの次の年は,当然それを織り込んだ生産体制をとるはずで,その時に昨年と同様のイベントが発生しなければ,生産過剰で価格が低下してしまい,むしろ収入は減ってしまう,ということすら起こりかねないわけですよ.

そう考えると,データを用いた農業でできること,というのは生産を行う際に生じるイベント以外のリスクをどの程度軽減するか,というところに尽きるのではないでしょうか.
要するに,日常起こりうるリスクへの対処として,例えば潅水の頻度を土の状態で買える,とか.病気になりやすい条件になったから,殺菌剤を散布する.だとか.後は収穫の適期を効率的に判断するとかそういうところになるんじゃないですかね.
また,Donny氏の考えている植物1個体ごとのデータ回収となると,おそらく植えっぱなしにできるようなものであったり,ある程度の長期間収穫を行うものに限って行うことができるものであると考える必要があります.
なので,植物工場で1年間育てるトマト,とか.果樹園とかワイン用ブドウ園とか,そういうところ以外では使うのが難しいと思いますね.

IT農業とカッコよく言って,無人のトラクターが走るとかが目立ってますけどね.実際のところは,こうした普段の管理部分でデータを活かすことが重要になるのではないかなぁ.

まとめ

いずれはデータを用いた農業がそれなりにはおこなわれていくはずだが,あくまで現在はデータを集めてくる機械の開発フェーズ.
でも,そのデータが生かせる部分というのは目立ちにくい日常的な管理業務に限られてくると考えられる.
生産物のポートフォリオを考える,とか,収入の安定にデータ農業が関わる,というのは気象データから算出されるもの以外のイベント事象が起こった際に,モデルが狂ってしまう可能性があるため発達しないと考えられる.

ということで,今日はここまで.




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ABOUTこの記事をかいた人

研究者になることはやめましたが,農とともに心はあります. 何とか「修士(農学)」の学位を獲得できた模様.このブログもそろそろ真面目に書かないと... と思っています.