豆腐に規格が出現? 品質管理の厳格化は誰のためか




どうも,野良百姓です.

農業新聞にこんな記事がありました.今回は豆腐とダイズについて少し考えていきたいと思います.

豆腐の原料-ダイズ

まずは,原材料のダイズについて見ていきましょう.日本において,ダイズの栽培が始まった時期は良くわかっていませんが,山梨県北杜市の酒呑場遺跡でダイズと推定できる痕跡が見つかっており,食用としての利用が始まったのではないかと考えられています.
戦前の日本では栽培面積が40万ha,収量も30万t-40万t前後で推移していました.戦後も1950年代にはこの数字を達成しています.
1961年のダイズ輸入自由化により,1970年代には栽培面積が10万haを下回りましたが,その一方で減反政策に基づいた転作奨励作物としてダイズが挙げられてきました.まぁ,転作についてはいろいろとありましたが,この結果ダイズの主な生産の場は畑から水田転換畑(元水田の湿気た場所)へと変化していくこととなります.
数字としてはこんな感じです(出典: 農林水産省「大豆に関する資料」).

日本のダイズ平均反収は世界平均の240-260kg/10aよりも大幅に低く,全国平均値では170kg/10a程となっています.また,生産量も年度によってばらつきが大きく,20万tから30万tの間をフラフラしているので,実需者としても使いにくい部分があることは否めません.

日本でのダイズ利用

国内でのダイズ需要は2015年時点で約340万tとなっており,2003年をピークに減少傾向となっています.この需要のうち,搾油用が約225万t,食品用が約95万tで残りが飼料用となっています.食品用大豆の需要量は95-100万tの間で推移しています.農林水産省の資料によれば.2015年のダイズ全体の自給率は7%であるものの,食品用のダイズの自給率は25%となっています.国産ダイズは価格が高いため,食用に主に回っていると推定されます.

さて,この食品用大豆の用途はどうなっているのでしょうか.農林水産省の「大豆に関する資料」によると,次のようになっています.

ほとんどが豆腐(油揚げを含む)ですね.次いで,納豆と味噌がほぼ同率2位という感じでしょうか.

豆腐製造過程

さて,豆腐の製造は食品用ダイズの約半分が充てられています.このうち,豆腐に加工される国産ダイズは2007年時点では13.4万tが用いられています.国産ダイズは,消費者からは安全性や食味の点で高い評価をもらう一方で,メーカー側からはダイズの成分の変動が問題となっています.生産量が高々20-30万tと少ないため,諸外国産のものと比べるとダイズ内の成分のばらつきが目立ってしまいます.

そうなると,メーカーとしては毎日どの程度ばらつきがあるのかを確認することが必要となり,生産効率が低下することが考えられます.このようなことから,国産を多く使うのは地元の豆腐屋さん,外国産を多く使うのは大手豆腐メーカーという推測が成り立つのではないでしょうか.

では,豆腐製造の工程です.
まずダイズを水に浸して膨らませます.この浸す時間は夏では短く,冬では長くなりますが,おおよそ10-16時間程度で行われます.この時,ダイズは自身の体積の約1.0-1.2倍の水を吸収します.次いで,水を加えながら膨らませたダイズをすり潰していきます.加える水の量は,絹豆腐ではダイズの乾燥重量の5-6倍を,木綿豆腐や油揚げではダイズの乾燥重量の8-10倍を加えていきます.ここで作られた生呉を煮沸して呉というものにします.ここからおからを除くと,やっと豆乳になります.この豆乳ににがりを添加することで豆腐になります.木綿豆腐や絹豆腐等様々な豆腐がありますが,手順としては同じです.

豆腐の規格

さて,やっと豆腐の規格の話です.まず,豆腐の定義および分類の案を表で示します.

名称 ダイズ固形分 成分・加工
とうふ 10%以上 ダイズ,にがり,水だけを使用
調製とうふ 8%以上 副原料を用い,味・食感などを調製
加工とうふ 6%以上 調製とうふよりも加工度の高いもの

現在の案です.先ほどの製造工程を考えると,木綿豆腐は水が多く加えられていますが重量の8-10%程度はダイズからやってきています.つまり,まっとうな豆腐の生産を行っていれば「とうふ」規格に入ると言えます.
では,なぜこういうものが必要になってきたのでしょうか.先ほどの話を思い出していただきましょう.外国産を主に使うのはメーカーで,国産を主に使うのは町の豆腐屋さんではないか,という推測を私は立てました.
さて,町の豆腐屋さんは1960年の50,000軒から7,500軒へと約85%が廃業してしまいました.この理由として,深夜から明け方に作業が集中する…というような労働環境を子供が嫌がって継がなかった,というのもあるかもしれません.とはいっても,それだけでは説明がつかないですし,納得もできませんよね.

豆腐の価格を調べてみました.町の豆腐屋さん(野良百姓の住む某市)では約1円/gでした.では,メーカーのものはというと,約0.3円/gでした.

既に3倍くらい違いますよね… これが不当廉売かどうかは原材料価格の問題があるので何とも言えません.でもね,これだけは言えると思うんだ.大手メーカーのものは安すぎるんだよ.それに全国で売ってるわけだ.在庫リスクが少ない大手メーカーと在庫リスクの高い個人商店.これはね,減っていきますよ.
もちろん特色があるところは生き残っていくんだろうし,何なら撤退戦なので殿は大変かもしれないけど,地域で生き残りさえすれば独占で仕事もできるわけで.まぁ,それはどうでもよろしいお話ですね.

結局この規格って誰のためにあるのか,というとやはり日本のダイズ農家のためなんだろうな.「生産物のロットごとの変動が大きいから大手メーカーが使わない→ダイズが売れないと農家の経営がやばい→売り先の確保手段を作る」という意図があって,国産ダイズの需要が大きな豆腐産業のうち,売り先として大きな部分を占めている町の豆腐屋さんを保護していくための規格ということなんじゃないだろうか.納豆もこうした規格を作るという話があるのも,同じような理由だろうし.
まぁ,ダイズのロットごとのばらつきが小さくなるようにするためには,大型の生産者が大量に生産すればいいのでは?という方向で話を進めて,大手メーカーに対して厳しい規制じゃありませんよ,というパフォーマンスをするんではなかろうか.
新聞としては,適正な利益を農家に還元するため,となっているけれども,別に大手メーカーに適当な価格で売れるのであればこんなことを言い出すこともなかったのではないか?と思うわけで,実際の施策として行うには,こんな感じなのではないだろうかと思うわけです.

さて,これらの規格を展開していく際の問題です.JAS規格は,国内の業界に諮って「これでいいですよね」とやればどうにかなりそうですけど,コーデックス規格にする時には,国外で既に「豆腐もどき」といえるような代物を生産してる人たちからクレームのようなものが上がってくることは想像に難くないですね.どうやってコーデックス規格に豆腐と納豆を持ち込んでいくのか,ということに興味がわきます.
うまくいけば,日本の豆腐や納豆を直接国外で販売できるようになるかもしれません.まぁ,中国にも豆腐とか納豆あるから輸出という観点では微妙かもしれないですが.

では,また.




2 件のコメント

    • 風来坊さん,ありがとうございます.
      スーパーの豆腐も利益は乗っているようです.というのも,通常の豆腐製造工程では「おから」と呼ばれるものが生呉から呉にする過程でできて,それを廃棄物として処理するのですが,大手の食品メーカーの工場で用いている機械ではそれができないとか.その点でコスト削減ができていることも廉価販売が可能な要因の一つかもしれません.
      随時調べていきたいと思います.

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    研究者になることはやめましたが,農とともに心はあります. 何とか「修士(農学)」の学位を獲得できた模様.このブログもそろそろ真面目に書かないと... と思っています.